2014年12月7日日曜日

旭山動物園の理念

  当園では、飼育動物を「野生種」なのか、「家畜・ペット種」なのかで、人間との関わりかたの違う生き物として、飼育・展示を行っています。
  
  家畜・ペット種は人間が長い年月をかけ野生種を家畜化し、改良を重ねて作り出した、人間たちの都合、ルール、価値観の中で生まれてきた生き物たちです。また彼等は飼い主がいてはじめて存在できる命です。
   当園では家畜・ペット種は「こども牧場」で飼育・展示をしています。ここでは直接、動物との触れ合いを通して「命の温もり、命の尊さ」を感じて欲しいと考えています。

  動物園で飼育している動物の大半は野生種です。
  野生種は人間と全く異なるルール、価値観の中で生活する生き物たちです。それぞれが生息する環境の中で食べるもの、食べられるものが、狩り尽くすこともなく怯え続けることもなく見事に共存し、個でありながら環境という全体の一部として全ての種・個体が調和しています。人間はこの共存・調和の輪から外れて、独自の道を歩んでいます。今や人間が全ての生き物の運命を握っていると言っても過言ではありません。

  野生動物の保護や環境問題、あるいは駆除を考える時、たとえカラス、スズメといえども、私たちと対等な生き物なんだとの認識を持つことから始めなければいけません。

  当園では、ありのままの彼等の生活や行動、しぐさの中に「凄さ、美しさ、尊さ」を見つけ、「たくさんの命あふれる空間の居心地の良さ」を感じて欲しいと考えています。

  ペット種のように触れ合う、可愛がる、芸をさせる、擬人的なポーズに価値を付けるといった切り口から、野生種への興味や関心を持ってもらうべきではないと考えています。

  
    (『旭山動物園の動物園図録(改訂第2版)』巻頭より抜粋)
  

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